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【お宝漫画】「ザ・ムーン」ジョージ秋山・著【おすすめ】

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*一番上の画像は僕所蔵の本です。「ザ・ムーン」(ジョージ秋山・著/復刊ドットコム)より引用。

「ザ・ムーン」「週刊少年サンデー」1972年14号~1973年18号まで連載された、鬼才・ジョージ秋山先生のSFロボットバトル漫画です。
ジョージ秋山先生は「銭ゲバ」「アシュラ」などの異色作で注目され、その後の作品がなんとSFである本作です。
人間の「業」について描かれてきたジョージ秋山先生ですが、少年漫画のSFロボットバトル物の本作でもそれがふんだんに描かれています。
そしてそれは少年漫画とは思えないトラウマ級のバッドエンドに繋がります。

(あらすじ)

「力こそ正義」が信条の大富豪・魔魔男爵は、2兆5千億円をかけて巨大ロボット「ザ・ムーン」を製造した。
ザ・ムーンは純粋な正義の心を持った少年少女たちが念力を送ることによって動き出すロボットだった。
魔魔男爵は9人の少年少女たちにザ・ムーンを託し、正義を守るために悪の殲滅を依頼した。
9人の少年少女たちはザ・ムーンを操り、カルト組織や宇宙人と対決していくのだった。

 

「ザ・ムーン」は古本の市場に出ることは滅多になく、出回っても高価なプレミアが付いているので、なかなか手が出せない幻の本でした。
Kindleではお手頃な値段で出てはいるのですが、やっぱりこういう本は紙でじっくり読みたいものです。
ということで「完全版」のブ厚い単行本を買ってしまいました。1冊4000円強で全3巻なのですが、後悔はしていません。

「完全版」はA5サイズ、各巻平均450ページ、カラーページや扉絵そして予告ページも再録されているので、値段相応にお得です。
ブ厚いので手応えがあり、読み応えもあります。

大富豪・魔魔男爵は、この世にはびこる悪を憎み、力による正義を遂行するために2兆5千億円を投じて巨大ロボット「ザ・ムーン」を建造します。

ザ・ムーンは純粋な正義の心を持つ子供の心に反応するため、魔魔男爵は9人の少年少女にザ・ムーンを託します。

少年少女9人の心が一つになることでザ・ムーンは動き出します。

9人の少年少女たちは、それぞれ学校の教科のような名前をしています。

 

物語は4つの敵と戦う構成になっています。

・VS連合正義軍
・VS踊次郎
・VS春秋伯爵
・VSケンネル星人

全部解説すると長くなるので「VS連合正義軍」「VSケンネル星人」について触れていきます。

「VS連合正義軍」

字面からしてヤバイ組織です。当時の世相を考えてみると名前の由来は「連合赤軍」ですね。
チョッパータイプのアメリカン・バイクは、映画「イージー・ライダー」からの影響だと思われます。
連合正義軍のメンバーは、ジョージ秋山先生の別作品「デロリンマン」に登場するオロカメンと似たマスクを着用しています。
見開きはコピーの貼り付けだと思いますが、連載時の1972年には個人でコピー機を所有することはまだ一般的ではなかったと思われるので、印刷所でサンプルとして作ってもらったのかもしれません。
以前、赤塚不二夫先生が「おそ松くん」執筆時に、六つ子の顔(顔パーツ無し)を大量に印刷したサンプルを使って原稿に貼り付けて、後から顔を描き足したという話を聞いたことがあります(後に、貼るより描くほうが早いといって止めたそうですが)。ジョージ秋山先生も近い方法を使ったのかもしれません。

連合正義軍の目的は「偉大なる指導者による日本の統治」であり、正義を行使するためには力が必要であるため、なんと水爆を保有しています。

連合正義軍の指導者・未来さまは、民衆を統治するためには恐怖が必要だと考え、8月6日、広島に原爆が落とされた同じ日に、四国に水爆を落とす計画を実行します。
平和のためには犠牲が必要であり、それを民衆に植え付けることで争いを抑制し、何十億の人間に永遠の平和を与えるというものでした。
また水爆投下後、メンバーは何十万人の犠牲者へ黙祷を捧げて、その責任を取るために自害するということでした。まさに狂信的なカルト組織です。

サンスウたちは連合正義軍の水爆投下計画を阻止するためにザ・ムーンを操ります。
そこに連合正義軍が開発したオランウータンの巨大サイボーグが立ちはだかります。
この日は満月であり、満月がザ・ムーンの三日月型の胸部ブロックと重なったときに三日月型のビームが回転して放たれ、オランウータンの巨大サイボーグに直撃します。
まるでTVアニメ「ザンボット3」のムーン・アタックのようです。
ただこの武器は満月のときしか使えないため、月に一度しか使えません。2兆5千億円かけた割にコスパ悪い気はします。でも三日月型の胸部ブロックに満月がハマる絵面はカッコイイしワクワクするんですよ。

オランウータンの巨大サイボーグに勝ったザ・ムーンは発射された水爆を奪取します。
サンスウたちの「水爆を何とかしなければ日本が危ない!」という思いをザ・ムーンはキャッチして、水爆が爆発しても被害を出さないように、そのまま海に入り沖に進んでいきます。
沖に進んで行くザ・ムーンの見開きに日本国憲法第九条の文言が重なります。このジョージ秋山先生のセンスにシビれます。
そして爆発、ザ・ムーンによって日本は救われました。しかしサンスウたちはザ・ムーンがその身を犠牲にしたのだと思い泣き崩れます。

その後、魔魔男爵が財力を費やしてザ・ムーンは海底からサルベージされます。

魔魔男爵にしても連合正義軍にしても、「正義のため」に行動を起こしていることには変わりません。しかも両方とも理想論として綺麗事で正義を語るのではなく、「正義を行使するのには力が無ければ意味が無い」という現実的な考えを持っています。

魔魔男爵は、世界は「正義VS悪」という構図ではなく「正義VS別の正義」と述べています。「悪」を信じ悪行を行っているのではなく、自分の信条を「正義」と確信し、自分にとっての善行を行っているのです。それが相手と摩擦が生じることがあります。
厄介なことに自分が信じる「正義」は譲ることができないため、「別の正義」と衝突が起きます。そして自分の「正義」を存続させるためには「力」必要です。
魔魔男爵は純粋な「正義」を望んでいますが、自分自身を汚れた人間と思っているため直接自分の手で正義を行使しようとはしません。その代わりに莫大な資金を費やして巨大ロボットを開発し、正義の行使を純粋な心を持った少年少女たちに託します。

魔魔男爵は月に一度、子供たちを自宅に招待して食事会を行っています。大富豪ならではの豪華な食事に子供たちも感激します。
魔魔男爵は食事をしながら子供たちの活躍の話を聞くのを楽しみにしています。

魔魔男爵の大富豪描写がなかなか良いですよ。魔魔男爵が個人的に乗っている車は「メルセデス・ベンツSSK」で、1928年から1932年までで世界で37台しか製造されていないモデルであり、その値段は億単位です。
テレビアニメ「ルパン3世」パート1の前半に登場するルパンの愛車と同じです。

魔魔男爵には「糞虫」という忍者のような下僕がいます。魔魔男爵が「お前は何だ?」と問うと「はーっ糞でございます」と答えます。
糞虫は魔魔男爵を絶対的な主人と崇め、自身は徹底的に卑下します。これが魔魔男爵が糞虫を呼ぶたびに主従関係の確認の儀式が行われます。
糞虫は魔魔男爵の命を受け、子供たちの安全をサポートします。

ザ・ムーンの巨大感の表現がまた良いんですよ。ロボットの巨大感を出すための演出として「同一画面内に比較対象物を配置する」という方法があります。
見開きページでは、手前に逃げ惑う人々がいて、その奥に人工建築物である橋があり、橋の奥からザ・ムーンが手前に迫って来ます。これはゴジラに始まる特撮怪獣物の技法でもありますが、それがロボット漫画にも活かされています。

上の見開きもザ・ムーンの巨大感を表現した演出です。群衆の上にザ・ムーンの影が落ちることで巨大感だけでなく威圧感まで表現されています。アニメ版の「進撃の巨人」の第1話にも同じようなシーンがありました。もしかしたらそれはザ・ムーンのオマージュだったのかもしれません。

巨大ロボット漫画の祖が「鉄人28号」(横山光輝・著)だとすると、その派生として「ザ・ムーン」や「マジンガーZ」(永井豪・著)が登場します。驚くことに「マジンガーZ」は「ザ・ムーン」と同時期の1972年~1973年に週刊少年ジャンプに連載されていました。2大ロボット漫画が別雑誌で同時期に連載されていたのも奇跡的ですね。
マジンガーZは操縦者がロボットに搭乗して操縦するという、画期的な作品でした。ザ・ムーンは鉄人28号と同じく外部から操縦しますが、操縦者9人の心が一つにならないと動きません。この設定は後にテレビアニメ「コン・バトラーV」にも登場します。
「マジンガーZ」と「ザ・ムーン」がその後のロボット物に多大な影響を与えているのが興味深いです。

ザ・ムーンは日本正義軍との戦いの後、魔魔男爵により海底からサルベージされ、その後、踊次郎との戦いを経て、春秋伯爵のロボット・ファーブルとの戦いが始まります。

強敵ロボット・ファーブルとの戦いのため、サンスウたちは新たなザ・ムーンの操縦方法を試みます。
それは全員で般若心経を唱えることで精神統一し、ザ・ムーンとのシンクロを高めようというものです。
独特のアクションで般若心経を唱えるサンスウたち、精神統一された子供たちの念動力(サイコキネシス)によって動くザ・ムーン、その組み合わせが異様な迫力を醸し出します。異様だけどカッコイイんですよ。

「VSケンネル星人」

物語は最終章のケンネル星人との戦いに入ります。
ある日、空飛ぶ黒い円盤の目撃例が多発し、そのうちに数多くの黒い円盤が東京上空に現れるようになりました。

黒い円盤の主は「ケンネル星人」という、犬の姿に似た宇宙人でした。その代表者としてセントバーナー提督が現れます。
彼らは地球人との平和的友好関係を築くため、探検隊員は地球人を調査していました。しかし探検隊員は捕獲され「言葉を話す犬」として豪商の木の国屋商衛門に売られてしまいます。
木の国屋商衛門は探検隊員に対して、ケンネル星人との独占的な貿易を持ちかけます。木の国屋商衛門はケンネル星人の科学力を得て日本の頂点に君臨しようと画策します。しかし探検隊員は、自分たちは平和的友好関係を結ぶために地球に来たのであり、個人の利益のための貿易はできないと説明し、またセントバーナー提督が認めないと忠告します。

日本の中田総理(時代的にモデルは当時の田中角栄総理)はケンネル星人との平和的友好関係を結ぶ会談をするために円盤に向かいます。
そんな中、探検隊員のケンネル星人が殺害されます。

これは木の国屋商衛門の策であり、地球人とケンネル星人が戦争状態になればケンネル星人は地球の科学力以上の超兵器を持ち出すと読んでいました。
木の国屋商衛門はそれを奪うことで世界を支配することを計画します。

ケンネル星人は地球のとある場所に超兵器を設置しました。それはカビの発生装置で、1年後にカビは地球全体を覆い、あらゆる動物や植物が死滅するというものでした。
セントバーナー提督は、1年後に地球が死滅するという状況で地球人がどのような起こすのかを試しています。

サンスウたちは木の国屋商衛門の所有地である山でケンネル星人の超兵器を発見します。
彼らはザ・ムーンを操り、超兵器を止めるために山の中を突き進みます。

しかし彼らの体はカビに浸食され、一人、また一人と倒れていきます。それでも彼らは超兵器を止めるために進み続けます。

そして物語は少年漫画とは思えぬほどのバッドエンドを迎えます。
こんなにも救いの無い少年漫画は滅多に無いでしょう。これはジョージ秋山先生しか描けない世界です。
ある意味「ザ・ムーン」という漫画は伝説になりました。

「ザ・ムーン」連載終了から31年後の2004年、「ザ・ムーン」にインスパイアされた漫画が登場します。
それが「ぼくらの」(鬼頭莫宏・著/小学館)です。
実際、単行本第1巻の初期の帯にはジョージ秋山先生の推薦文があったそうです。

15人の少年少女が全長500mの巨大ロボットを操縦し敵ロボットと戦います。

ロボットの名前は「ジ・アース(The EarthをもじってZearth)」

そして少年少女のサポート役に「コエムシ」が登場します。
「ぼくらの」についての記事は次回に掲載予定です。

「ザ・ムーン」では事件が解決した後にサンスウたちが腕を付き出して「ザ・ムーン!」と雄叫びを上げるのが恒例でした。このあたりは昔の少年漫画らしいです。
最終回はバッドエンドだったので雄叫びはありませんでしたが、ブログの締めくくりだけでも少年漫画らしく爽やかに終わらせたいです。

さぁ皆さん、ご一緒に!「ザ・ムーン!」

 

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僕の本棚には、僕の趣味で保管しておいた漫画が、期せずして「お宝」になってしまったものが数多くあります。

「お宝」といってもプレミアが付いて値段が高騰しているものという意味ではありません。
存在そのものが希少となり、現在、紙媒体として入手困難なものを僕の中で「お宝」と定義しています。
「お宝」とまではいかないものの、一風変わったレア度の高いものは、「漫画紹介」のカテゴリに入れています。

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