*一番上の画像は僕所蔵の本です。「ルサンチマン」(花沢健吾・著/小学館)より引用
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「アイアムアヒーロー」の花沢健吾君の週刊連載デビュー作「ルサンチマン」です。
週刊ビッグコミックスピリッツ2004年03号から連載開始されました。
*僕が彼を「君」で呼ぶのは、僕と彼は魚戸おさむ先生のアシスタント同僚であり、彼は後輩でもあるためです。呼び慣れた言い方をさせていただきます。
(あらすじ)
近未来の2015年(連載時期は2004年)の東京、主人公・坂本拓郎は零細印刷所に勤める容姿の冴えない男。当然、異性との付き合いは皆無。
ある日、友人同士の飲み会で、拓郎はアンリアル(非現実)のギャルゲーを勧められる。この時代のギャルゲーは高度なAIとヴァーチャルリアリティが進化して、現実に限りなく近い体験が出来るようになっていた。
「本日をもって(現実の)女をあきらめましたっ!!!」
現実世界に嫌気がさした拓郎は、アンリアル(非現実)でアバターの姿になり恋愛を成就しようと突き進んでいく。
2004年に発表されたこの漫画はネットの未来をエンターテインメントとして描かれていますが、漫画として絵空事ではなく、現実が確実に「ルサンチマン」に描かれたアンリアル(非現実)になっていくので、花沢君の洞察力の鋭さが伺えます。
しかし初連載の巻頭カラーでブサイクのアップの見開きというのも、なかなか思い切ったことをしますねw。
主人公・坂本拓郎は零細印刷所に勤めていますが、社名が「ウオト印刷」になっています。
これは僕も花沢君も魚戸おさむ先生のスタッフだったので、関係者の名前が時々使われていることがあります。ちなみに僕の名前は使われていませんでした。
坂本拓郎は非モテの日々を暮らし、気が付けば30歳になろうとしていました。
居酒屋での友人との飲み会で、同じ非モテ仲間の越後と会いますが、彼は会社を辞めて部屋でギャルゲー三昧の日々を過ごしています。
しかしそんな状況にもかかわらず越後は坂本拓郎よりも幸せそうでした。越後は坂本拓郎に最新のギャルゲーを勧めます。
最新のギャルゲーはゴーグルやグローブを装着して、ヴァーチャルリアリティの中で現実感のある体験ができるようになっています。
現実では小汚い越後の部屋も、ゲームの中では豪邸になっています。
ログインした坂本拓郎は、手触りがあり本物の女性が目の前にいるような現実感のある体験に圧倒されます。現実の女性と違い、ゲームの中の女性は最初からプレイヤーに対して好意的なのも大きいです。
ゲームの中の越後は「ラインハルト」というイケメンキャラになっていて、美少女ハーレムを作って暮らしています。
しかしゲーム内ではイケメンキャラであっても、現実世界では小汚いアパートの部屋に引きこもりの非モテ男です。アンリアル(非現実)と現実世界の対比が容赦なく滑稽なのが良いです。
「アンリアル(非現実)」とは、現実世界で思うようにいかずルサンチマン(弱者による強者に対する憎悪)を募らせた者が現実逃避として行き尽く場所として描かれています。
現実世界での越後のセリフが刺さります。
アンリアル(非現実)でのギャルゲーを楽しむために必要なパソコンのスペックです。連載当時は2004年だったので、漫画の舞台である2015年は「約10年後」の設定として描かれています。
2022年現在で「TB(テラバイト)」といわれてもあまり驚きはありませんが、18年前である2004年では「TB(テラバイト)」は未来感のある単位でした。
坂本拓郎が着ているのは「ボディスーツ」はアンリアル(非現実)でのエロ行為を体感するためのものです。
和室の中でブサイクがSFチックな恰好をしているのが一枚絵として笑いを誘いますw。
現在でもボディスーツはありますが、主にモーションキャプチャーで人物の動きをトレースするために使います。
漫画と現実では目的が逆になっているのが可笑しいです。
映画「シン・ウルトラマン」の宣伝動画で、庵野秀明さんが似たようなボディスーツを来てウルトラマンのモーション撮影をしていたのが、やたら可笑しかったですw。
「ルサンチマン」が週刊ビッグコミックスピリッツで連載されていた当時は、読者の好みが分かれるようでした。ヴァーチャルリアリテイの世界の描写が評価が高かった半面、登場人物のオタク描写が的確で上手く、あまりにも生々しかったため、そこで反感を買うこともあったようです。
しかし映画「レディ・プレイヤー1」よりも10年も早くヴァーチャルリアリテイの世界について綿密に描かれているので、僕は「花沢君スゲェ」と思っています。
「レディ・プレイヤー1」の原作小説「ゲームウォーズ」の発表は2011年なので、「レディ・プレイヤー1」の影響を全く受けずにで花沢君は独自の世界観を構築したことになります。
しかも今から考えれば、最近流行の「異世界転生モノ」の先駆けでもありますね。
花沢君が「ルサンチマン」の連載を始めた当時、彼は初めての週刊連載ということもあり、当時近所に住んでいた僕が手伝いに行くことがありました。
僕が手伝ったのは、第6話、第7話、第9話です。
第6話での左側のページ、島の一枚絵は僕が描いています。
第7話で島に通ずる電車も描きました。
同じく第7話では馬車も描いています。
ゲームの世界では何でもアリなので、とにかく何でも描いています。
第9話、この2ページ分を描きました。右下の電車の3コマは他の人が描いたかもしれません。
「ルサンチマン」は週刊連載だったので忙しかったですが、手伝いはとても楽しかったです。
この漫画で描いた背景は全部花沢君が作った「想像の産物」なので、写真トレースでは描いていません。資料は元にしていますが、ほとんどアレンジして描いています。
画像は単行本第1巻と第2巻を買った際に花沢くんにサインしてもらったものです。越後とラインハルトを描いてもらいました。両方とも同一人物ですw
その後、彼は引っ越し、僕も地元に帰ったためにしばらく彼と会ってはいませんが、彼の活躍を嬉しく思うと共に、「ルサンチマン」を手伝っていた頃がとても懐かしく思えます。
「ルサンチマン」は2022年の現代から読み直しても、連載当初とはまた違う視点で面白く読めると思います。
僕は「ルサンチマン」は再評価されても可笑しくはないと思っています。
作画配信内での「ルサンチマン」の紹介(23:08から)
「漫画紹介」については、僕が以前からおこなっているニコ生作画配信(現在都合により中断)でも紹介している回があります。
伊原達矢の「お絵描き中(継)」
2時間の配信の中、ラスト30分から紹介しています。
過去の配信動画はYouTubeにもアップしています。
Tatsuya Ihara Live Drawing
2時間の配信を4分割してアップしているので、動画「その4」が「漫画紹介」になっています。
「ルサンチマン」は評価は高かったものの、人気作品とまではいかなかったため、単行本4巻分で終了になってしまいました。
今は新装版が2冊、電子書籍版が4冊出ています。
・紙単行本(amazonリンク)
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