*一番上の画像は僕所蔵の本です。「HeaVen」(GONTA・著/講談社)より引用
「HeaVen」は1990年に「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載された、王欣太先生のデビュー作です。
しかもこの頃はペンネームがGONTAです。王欣太と名乗るようになったのは「蒼天航路」の頃のようですね。
一般的には「蒼天航路」のイメージが強いのとペンネームが王欣太であるため、アジア系の登場人物の歴史物語を描く漫画家という印象が強いですが、デビュー作はアメリカやカリブ風の街「ヘヴン」が舞台になっています(アジア人も登場しますが)。
(あらすじ)
アメリカやカリブ風の無国籍で自由の街「ヘヴン」、ここに住む主人公トーマは何物にも縛られない。彼の「雄の魅力」は街の女を虜にする。
街のイザコザ、ケチなトラブルもトーマにかかれば即解決。
エキゾチックな外国人の描写が抜群に上手いので、その後に「蒼天航路」を描くとは当時思ってもみませんでした(「蒼天航路」も当初は原作付きでしたが)。
アダルトな内容が多いのですが、生きるエネルギーに満ちあふれた物凄い作品です。これがデビュー作というのも驚きました。
第1話はトーマという主人公の紹介だけでなく、「ヘヴン」の街の空気感まで見事に表現されています。主人公の住む街がしっかり描けていることでトーマという架空の男の存在感が増します。この空気感がイイんですよ。
アメリカかカリブのような街をヨーロッパスタイルの漫画形式で読んでいるような不思議な感覚になります。この連載が30年前に始まったときは本当にショックでした。
雄の匂いを発散させるトーマ、その匂いを嗅ぎつけるように近づいてくる女たち、女たちだけでなく街の人々全てがトーマに魅了されています。
90年代に入って絵柄が洗練されている漫画が増えつつあった時期、これだけ生々しくキャラクターの「匂い」が強い漫画は異彩を放っていました。
「月刊アフタヌーン」という雑誌は実験的精神に溢れていて、僕は大好きです。「HeaVen」も他の雑誌では取り上げるのも難しかったのではと思います(レベルの高い作品ですが、癖の強い作品は雑誌に載りにくい傾向もあるという意味で)。
「月刊アフタヌーン」からは以下の作品が出ています。
・「ああっ女神さまっ」藤島康介・著
・「寄生獣」岩明均・著
・「げんしけん」木尾士目・著
・「深く美しきアジア」鄭問・著
・「無限の住人」沙村広明・著
・「ヨコハマ買い出し紀行」芦奈野ひとし・著
など、個性的な作品が多いです。
その中でも「HeaVen」は特に個性的で、「月刊アフタヌーン」から出るべくして出たという感じですね。
王欣太先生がGONTA名義時代の漫画であり、画風も「蒼天航路」とはまた違うレアな漫画です。
僕はレアで傑作だと思っているのですが、amazonで紙の単行本が1円で販売されていたのは少しショックでした。
どうやら電子書籍は出ていないようです。
在庫もあまり無いようなので、「お宝」どころか「幻の作品」になってしまうかもしれません。入手して読むなら今の内ですね。
僕の本棚には、僕の趣味で保管しておいた漫画が、期せずして「お宝」になってしまったものが数多くあります。
「お宝」といってもプレミアが付いて値段が高騰しているものという意味ではありません。
存在そのものが希少となり、現在、紙媒体として入手困難なものを僕の中で「お宝」と定義しています。
「お宝」とまではいかないものの、一風変わったレア度の高いものは、「漫画紹介」のカテゴリに入れています。
このブログではそんな「お宝漫画」などを紹介していきます。
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