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【漫画紹介】大友克洋全集(その3)「銃声」大友克洋・著【おすすめ】

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*一番上の画像は僕所蔵の本です。大友克洋全集「銃声 」(大友克洋・著/講談社)より引用。

「大友克洋全集」とは、漫画家・大友克洋先生のこれまでの仕事を全部収録する一大プロジェクトです。
これは紙の単行本だけで電子書籍にはなりません
現在「AKIRA」以外の本は、ほとんど絶版状態のようです。
僕は「大友克洋全集」は「絶対に買うべき本」だと思っています。

上記の「AKIRA以外の本は、ほとんど絶版状態」だというのもありますが、他にも理由があります。

・雑誌と同じ「B5サイズ」
大友克洋先生の単行本は大体が「A5サイズ」でした。A5サイズでも単行本の中では大きく、また本の厚みがあるので読み応えはありました。
しかし大友克洋先生の漫画は絵が緻密なので、単行本で縮小されると絵が潰れたり見えにくくなったりします。だから版が大きい方が細部までじっくり楽しめます。
そのためか大友克洋先生の作品は一切電子書籍化されていません。大友克洋先生が紙の本に拘っているのもあるかもしれませんが、スマホの小さい画面で見た場合に絵がゴチャゴチャしますし、また迫力も出ないからという理由もあるかと思われます。

・未収録だった作品が読める
初期の作品掲載誌は「漫画アクション」(双葉社)でした。掲載された作品の中のいくつかは単行本収録されていないものがあります。
特に今回紹介する「銃声」は大友克洋先生の商業誌デビュー作でありながら単行本未収録のため、長らく「幻の作品」状態でした。
現在、双葉社から出版された単行本は全部絶版状態になっています。大友克洋先生の双葉社時代の作品は殆ど読む機会は無くなっていますので、単行本未収録作品はさらに目にする機会は失われていきます。
「大友克洋全集」ではデビュー前の投稿作や未発表作も収録されているので、ファンにとっては聖遺物のような存在になります。

今回の「銃声」は第6回配本(2023年7月21日発売)になります。

収録作品(全集1目次より引用)

・「海が…」(COM 新人賞投稿作品 1971年 )
・「戦場ー習作ー」(未発表 1971年)
・「まっちうりの少女」(未発表 1971年)
・「ルイーズ」(未発表)
・「銃声」(漫画アクション増刊 1973年8月4日号)
・「親友」(漫画アクション増刊 1973年10月6日号)
・「スマイリーおじさん」(漫画アクション増刊 1973年11月3日号)
・「橋と そして…」(週刊漫画アクション 1973年11月29日号)
・「子供たちは何処へ……」(週刊漫画アクション 1973年12月20日号)
・「上海かぜ」(漫画アクション増刊 1974年1月26日号)
・「密漁の夜」(週刊アクション 1974年2月28日号)

見事なまで全編「単行本未収録作」です。

収録作品を何作か紹介します。

収録作品の最初は「海が…」です。
この作品は大友克洋先生が1971年に「COM」の新人賞に投稿されたもので、大友克洋先生は当時17歳でした。
これ以前も漫画を投稿されていますが、大友克洋研究家の鈴木淳也さんの著書「大友克洋全集解説 1 銃声」によると、初期の投稿作は編集部から返却されなかったため恐らく現存はしないということらしいです。
「海が…」は、大友克洋先生が上京したときに「COM」編集部を直接訪ねて原稿を返却してもらったそうです。そのため現存する最古の作品としてここから始まっています。

画面のほとんどにベタは使われず、白と斜線の掛け合わせで表現されています。一種、実験的な作品のようです。
内容は、人間の歴史を見続けて来た海が、浜辺に佇む一人の青年に「人間の罪」について問うというものです。
哲学的な内容を詩的な空気感で描かれており、不思議な読後感を覚えます。
「COM」では佳作第五席になり、選評こそ出ましたが作品掲載までには至りませんでした。

 

「大友克洋全集」の隣にあるのが前述の「大友克洋全集解説」です。これはそれぞれの全集につき、全集についての解説、取材、資料が付いた副読本です。
大友克洋研究家の鈴木淳也さんによる綿密な取材により、デビュー前の投稿作についてなども詳しく網羅されています。
鈴木淳也さんの凄いところは、大友克洋先生本人にだけでなく、その関係者にも広範囲に渡って取材をされています。
また大友克洋先生の作品が掲載された当時の雑誌も収集されています。
今回の「大友克洋全集 1 銃声」には商業誌デビュー前の投稿作(未発表)が収録されていますが、鈴木淳也さんはこの投稿作の選評カットが載った雑誌も入手されていて、「大友克洋全集解説」にそれが掲載されています。

 

また「大友克洋全集解説」は特殊加工された表紙が使われています。
「大友克洋全集」はビニールカバーで覆われていて、そのまま本棚に並べるとカバー同士がくっついてしまい取り出しに苦労するので、「大友克洋全集解説」を間に差し込むことによって本の取り出しがスムースになります。これは嬉しい工夫です。

「大友克洋全集解説」は主に同人誌即売会「コミティア」で頒布されますが、鈴木淳也さんのXアカウントからDMで注文もできます。
また神保町の書泉グランデなどの大型書店の漫画コーナーでも店頭に並べられています。

大友克洋先生の過去の漫画がほぼ絶版状態なので「大友克洋全集」はとても貴重な本ですが、さらに「大友克洋全集解説」は超一級の史料でもあります。これは揃えておいて絶対に損は無いです。

話が横に逸れたので、収録作品の紹介に戻ります。

「まっちうりの少女」

これは商業誌「未発表作品」であり、「大友克洋全集解説」によると、「ぱふ 1979年7月号 特集 大友克洋」に7ページほどがダイジェストで掲載され、原画展の図録に1ページほど掲載されたぐらいで、「幻の作品」とされていたそうです。
今回の全集で初収録されたので、全集はさらに貴重な本となりました。

投稿時代の大友克洋先生は、樹村みのり先生の影響が強く、少女漫画のタッチが見られるところが興味深いです。
またこの作品は、外国が舞台であり詩的表現が強いので、坂口尚先生からの影響もあるそうです。

坂口尚先生はファンタジックで飄々とした描線が特徴的でしたが、後年「石の花」「あかんべぇ一休」「紀元ギルシア」などはストーリーのリアルさもあって大友克洋先生のタッチを取り要られてました。
坂口尚先生の影響を強く受けられた大友克洋先生が、後年、坂口尚先生に影響を与えているのが面白いです。

「銃声」

大友克洋先生の商業誌デビュー作です。しかしデビュー作でありながら今まで単行本には収録されていませんでした。
初の単行本である「ショート・ピース」(奇想天外社)にも収録されておらず、単行本内にある作品リストに名前が載っており、その存在だけは知られていました。
「大友克洋全集解説」によると、1973年の増刊号掲載のため、当時掲載誌で「銃声」を読んだファンの人はほとんどいなかっただろうと推測されています。
しかも国立国会図書館に収蔵されてはいるものの、「銃声」のページは何者かの手によって切り取られているらしいです。
その後ファンクラブの会誌に再掲載されたので、一部のファンだけが目にしただけになっています。
「銃声」初掲載は1973年なので、今回の全集で52年目にして初の単行本収録になります。

海外の短編小説が原作になっており、それを元に大友克洋先生が作画をされています。
若干、漫画っぽいタッチではあるものの、大友克洋先生の基本的な絵柄は確立されているように思えました。
引きや俯瞰の構図が巧みで、映画表現的な上手さが見受けられます。当時、大友克洋先生は19歳(!)。10代の少年の作とは思えないほどのクオリティです。

過去の大友克洋全集の記事はこちらより↓

目次

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