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【漫画紹介】「女王のトランク」北森サイ・著【おすすめ】

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*一番上の画像は僕所蔵の本です。「女王のトランク」(北森サイ・著/幻冬舎)より引用。

「女王のトランク」は漫画家・北森サイさんが描く「実父からDVを受けていた内気で地味な女子高生が、SMの世界を知り女王様に成長していく物語」です。
SMを題材にしてはいますが所謂エロ漫画ではなく、暴力とプレイとの違いを知り、叩く者と叩かれる者の間に存在する「信頼関係」と「愛情」が描かれています。

(あらすじ)

主人公・ハレカは地味で冴えない女子高校生だった。
実父からDVを受け、実母が家から出て行った後は幼い弟を必死で守りながら抑圧された生活を送っていた。
ある日ハレカは街なかを歩いていて絶世の美女・ミヤとぶつかってしまう。ハレカとは正反対の輝かしいオーラを放つミヤに対し、実父の命令で学校指定のジャージ姿しか許されていなかったハレカは羨望の眼差しを向けた。
気が付くとハレカはミヤの持ち物のある高級そうなトランクを持ち去ってしまった。中に入っていたのは美しいドレスやエナメルの靴だった。
好奇心からハレカはドレスを着て街なかを歩いた。周囲からの視線を感じるハレカ、しかし周囲の反応はハレカに対し羨望の眼差しを向けるものばかりだった。今まで周囲から蔑みの目で見られていたハレカにとって、それは世界が一変した出来事だった。
しかしハレカはミヤに見つかってしまう。ミヤはハレカを車の中に押し込みとある場所へ連れて行った。
着いた場所は大きな洋館、そこは超VIP達が秘密裏に集う高級SMクラブだった…

実父からのDVを受け続け、踏みつけられる人生を歩んできたハレカは、高級SMクラブで男性がミヤに踏みつけられているプレイを見て驚きます。
男はミヤにプレイを望みます。ミヤがトランクを開けると、中には鞭や手錠が入っています。
ミヤがどの道具で責めてほしいのか尋ねると、男は答えます。

「バ…バラ鞭で」

名言キタ――(゚∀゚)――!!

バラ鞭とは先端が紐状の叩きのような形をしており、叩くと音は大きいものの衝撃は分散されるので、傷みは抑えめです。
しかしミヤは「ぬるい」として乗馬鞭を用います。競馬の時に騎手が馬の尻を叩くあの鞭です。叩くと衝撃は分散されることはなくストレートに伝わります。

ミヤが男を打ちのめす姿を見て、自分が知っているものとは真逆の世界がそこに存在するそのことにハレカは高揚感を覚えます。

ミヤに誘われハレカもプレイに参加します。ミヤに言われた通りに男性を踏みつけるハレカ、今まで男に踏みつけられ続けたハレカが逆に男を踏みつけている、そんな状況にハレカは戸惑います。

踏まれることの痛みを知るハレカは踏むことに躊躇します。しかし人の痛みを知ることは相手を理解することに繋がります。
いかに相手が望む痛みを与えるのか、それを見定めていくのが女王の務めです。

プレイにおいては、叩く者と叩かれる者の間に信頼関係が存在します。望まないのに与えられる痛みは暴力ですが、望まれて与えられる痛みは「愛の証」なのです。

ミヤはハレカが盗んだトランクを、ハレカに譲ります。ミヤはハレカの中に女王の素質があることを見出します。
「女はみんな女王になれるのよ」
その言葉は、ハレカの心に深く刺さります。

父親からのDVを受け男性恐怖症であるハレカは弱い存在です。
しかしSMクラブでの経験がハレカの心に火を着けます。もう誰にも踏みつけられないように強くなりたいと望みます。

そして強さは、自分を守るためだけでなく、自分が大切にしている人を守るためにも必要です。
何者にも踏みつけられない強さを望み、ハレカは女王になることを強く決意します。

しかし高級SMクラブは新参者にとっては優しくありません。ミヤの計らいで優遇されているハレカに嫉妬をする者もいます。
ハレカが女王になるのは試練の道でもあります。

これは「弱き少女が師の導きにより希望を見出し、試練を乗り越えて成長していく」という、「スポーツ根性漫画」の構図にもなっています。
SMという特殊な題材でありながらも、これは王道的な「少女の成長物語」なのです。
作者の北森サイさんの手腕の凄さが伺えます。

 

作者の北森サイさんは、漫画家・佐藤秀峰先生の漫画onWeb主催の「ネーム大賞」(現在は終了)で、なんと第2回、第4回の両方で大賞を受賞しています。
ネーム大賞には1回につき大体300作品ほど集まります。その中で頂点である大賞を2度も受賞している実力者です。
その後、週刊モーニングにて「泣き虫とうさん」で第66回講談社ちばてつや賞の大賞を受賞、モーニング・ツーで「ホカヒビト」を連載しました。

「ホカヒビト(1)」

「ホカヒビト(2)」

僕は第7回のネーム大賞にエントリーしたこともあり、縁あってお知り合いになりました。
スカイプやディスコードでの会話は何度かありましたが、まだ本人に直接お会いしたことはありません。北森サイさん主催のネーム会もあったのですが、当日の台風直撃や諸々の事情もあって参加出来ずじまいでした。
会話を何度も交わしているのに、一度も直接にお会いしていないという変な関係になっていますw。いつかお会いできる機会が来ることを待ち望んでいます。

「女王のトランク」は基本的に電子書籍での配信であり、北森サイさんはnoteの自身のページにて「女王のトランク」を1話ずつ先行配信しています。
これはnoteは作者個人が原稿を直接アップロードできるので「原稿完成→即アップロード」が可能だからです。
Kindle等電子書籍ストアでの配信は、佐藤秀峰先生の「佐藤漫画製作所」での「電書バト」を利用しています。「電書バト」へ原稿データを送ってから電子書籍製作をするため、製作期間を経てからの配信になります。

「電書バト」での電子書籍製作料は無料です。電子書籍がストアから配信されてダウンロード購入されて、著者に渡る利益が発生してから、その中から手数料が引かれるだけです。
「電書バト」での電子書籍配信については、こちらの記事に詳しく書かれてあります↓。

電書バト

目次

「電書バト」への電子書籍出版依頼のやり方

(一番上の画像は「電書バト」のサイトです) *2021年7月5日更新 (紹介記事の内容は「電書バト」のサイトを参考にしております。) 「電書バト」は漫画家・佐藤秀峰先生の「佐藤漫画製作所」が受け付けて ...

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noteでの配信とKindle等電子書籍での配信が可能なのは、北森サイさんの「女王のトランク」が出版社に所属してのでの配信ではなく、作者自身の個人配信だからです。また今回は紙の単行本が出ていますが、これは「女王のトランク」配信後に出版社から紙の単行本の出版契約があったためです。
それまでは漫画を出版するのは出版社に一任するしか方法がありませんでしたが、ネット時代になり個人配信という選択肢が増えました。
今までは商業誌デビューができなければ自作漫画の発表は困難であり、それ以外の方法は同人誌一択でしたが、ネットで自作漫画が世間に発表できるようになったのは漫画家にとって良いことだと思います。

・noteでの先行配信(←こちらのリンクから。最速で読めます)

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